第169回 定例研究会 生活保護の実状と裁判闘争

定例研究会「新生存権裁判の現状」の概要

社医研センター定例研究会は11月29日に「新生存権裁判の現状~提訴から8年」をテーマに窪田光理事(東京都生活と健康を守る会連合会会長)の報告と討論で開催しました。

報告は、生活保護裁判を「新生存権裁判」としてこの間の現状と運動・課題の内容です。

最初に、全世代型社会保障に向かう日本の社会保障の位置づけを国民のたたかいと関連して、社会保障制度審議会50年勧告、95年勧告、2012年社会保障制度改革推進法、2013年社会保障制度改革プログラム法、2014年医療介護総合確保法の流れとポイントを生活保護制度との関連で解説されました。

次に社会保障のあるべき姿を、人権としての社会保障とし、すべての人の権利として、能力に応じて「負担」必要に応じて「給付」を国・自治体の責任でおこなうことを指摘されました。続いて、社会保障制度切り崩しの突破口として生活保護の切り下げの経過を2012年「社会保障・税一体改革大綱」以降、社会保障費の増大を抑えるために「生活保護の効率化(生活保護費の圧縮)の名で生活保護費の削減の実態と内容を説明されました。

この動き対して、守ろう!私たちの「いのちの最終ライン」生活保護基準引き下げ違憲訴訟「いのちのとりで裁判」を全国29都道府県で1,000人を超える原告が裁判をおこしてたたかっている「いのちのとりで裁判全国アクション」の活動経過をリアルに報告されました。そこでは、生活保護基準の引き下げは社会保障の後退であり、生活保護基準はさまざまな制度(労働、税金、教育、医療、介護、福祉、住宅の47制度)に連動しており、私ちの「いのちと最終ライン(生存権保障水準)」生活保護基準を守り改善させることの重要な意義を力説されました。

この内容は生活保護基準と連動する影響と生活保護の基準の決まり方をふまえて、新生存権裁判で明らかにされた生活保護基準の引き下げの論拠を生活保護基準部会の意見を聞くことなく実施してきた不当性や屁理屈こねくりまわす国とスパッと裁けない司法のなか、いのちのとりで裁判は全国31訴訟29地裁判決のうち18勝し、勝利判決では「基準部会など専門家から構成される会議体における議論を経ていないこと」は「客観的な数値等との合理的関連性を欠く」と断罪しています。

生活保護基準は、2004年から加算、一時扶助部分にも容赦なく相次ぐ減額がされ、さらに2018年から生活扶助基準の見直しで年160億の削減がすすめられ、さらに物価上昇のなか生活保護費は引き下げの状況にあることが指摘されました。

最後に、日本・ドイツ・韓国の生活保護費の紹介があり、この新生存権裁判勝利をめざし、来年度の生活保護費引き上げの協力要請がされました。それに窪田理事がまとめられた「世論で裁判所を包囲し東京高裁でも勝利判決を!~生存権裁判東京における取り組み」(社会保障誌)と新生存権裁判八木明東京原告団長の「人として当たり前の生活を!保護基準引き下げは許せない~裁判に立ち上がった私の思い」(同誌)が紹介され、憲法25条の「健康で文化的生活水準」「人間として生きる権利」を問うた朝日訴訟をふまえ新生存権裁判は「権利はたたかう者にある」「戦争をさせない」人間の尊厳を自覚し確立してゆくたたかいとして運動を発展させることが提起されました。

討論では、生活保護制度の位置と日本の社会保障制度、新生存権裁判の内容と意義、生活保護(国民の最低保障)と最低賃金制、新生存権裁判と生活保護基準改善を広く国民的課題の運動にすることなど活発に意見交換されました。(佐々木)

第169回 定例研究会のお知らせ 生活保護の実状と裁判闘争

2024年11月29日(金)15:00~16:00

「生活保護の実情と裁判闘争」 報告 窪田理事 (録画) 

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